そのお客さんは、月に何回か来店する若い女性だった。
いつも午前中に入店して、閉店時間の午後6時ごろまで滞在。
勉強なのか、仕事なのか、何かに集中しているようだった。
コロナ下の2020年、那覇市にオープンした「Minsa Cafe(ミンサーカフェ)」。
コンセプトは「いつの世も、居心地の良い空間を、いつまでも」で、長時間の滞在も歓迎している。
「この空間で落ち着いていただけている、ということですから」
そう話すのは、オーナーで店長を務める青山朋佳さん(29)だ。
高校卒業後、リゾートホテルに就職し、25歳でミンサーカフェを開いた。
立ち上げから5年間続けてきたが、7月13日で閉店することが決まっている。
閉店を発表して以降、別れを惜しんで来店する人たちが増えた。
6月8日も忙しい一日で、閉店してからやっと片付けに取りかかることができた。
この日、月に何回か来店する若い女性は、カウンター席に座っていた。
会計の時に「ありがとうございました」と声をかけるくらいで、談笑したことはない。
いつもと同じように午後6時前に席を立ち、会計を済ませて店を出て行った。
カウンター席を片づけようとすると、コースターの上に何かが置いてある。
「あっ、忘れ物だ」と思って…